弁護士コラム

行方不明の相続人

 配偶者に先立たれてから一人暮らしをしていた姉が亡くなったが、兄弟の一人と長年音信不通で、遺産分割協議ができない、という相談を受けました。

 亡くなられた方にお子さんがいない場合、相続人となるのは、故人の両親(直系血族)です。ただ、両親の方が先に亡くなっている場合が多いので、通常は兄弟姉妹(兄弟姉妹の中に亡くなっている方がいる場合は、故人から見た甥姪)が相続人となります。
 故人が遺言を残していない場合、預貯金の払い戻しを受けたり、不動産の名義を変えるには、相続人全員の合意が必要で、その証しとして、全員が遺産分割協議書に署名し、実印を捺印する必要があります。
 したがって、行方不明の方がいると、いつまでも相続財産の処理ができないわけです。

 このような場合、行方不明者を除いて遺産分割協議をするには、二つの方法があります。
 一つは、行方不明になってから7年以上経過している場合、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることです。失踪の宣告がされると、行方不明者は死亡したものと見なされ、戸籍の記載が抹消されますので、その方を除いて遺産分割協議をすることができます。
 もう一つは、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てることです。不在者財産管理人が選任されれば、管理人が家庭裁判所の許可を得て、行方不明者に代わって遺産分割協議に参加することができます。

 相談の事例では、音信不通になってから数十年経過し、行方不明者の年齢が80歳を超えているため、実際に生存している可能性は低いものとして、失踪宣告を申し立てることにしました。

 所在がわからない相続人がいても、相続財産の処理をすることは可能です。
 どうかお気軽にご相談ください。